1.1. ファイアウォール、プロキシおよび NAT を透過
SoftEther VPN の重要な特徴の 1 つとして、ファイアウォール、プロキシサーバーおよび NAT (Network Address Translators) をうまくすり抜けることができる機能があります。NAT はしばしば、ブロードバンドルータ製品に搭載されています。
制限の厳しいファイアウォールは HTTP/HTTPS トラフィックしか通過させません。
SoftEther VPN は HTTPS ベースであるため、そのようなファイアウォールでも通過できます。
現代のコンピュータネットワークにおいては、セキュリティ上の理由で内部ネットワークと外部ネットワークとを分離するためのネットワークデバイスが設置されていることが一般的です。また、企業においてはセキュリティ目的だけではなく貴重な IP アドレスをオフィスにある複数のコンピュータで共有するためにファイアウォール、プロキシ、NAT が使用されています。これらのデバイスは必要不可欠となっています。
IPsec、L2TP および PPTP などのレガシーな VPN プロトコルを使用している場合、ファイアウォール、プロキシサーバーおよび NAT を経由して VPN 接続を確立することができない場合がよくあります。これらの VPN プロトコルは NAT が普及するより前の時代に開発されたものです。VPN パケットの伝送のため、IPsec および L2TP は ESP (Encapsulating Security Payload) パケットを使用し、PPTP は GRE (Generic Routing Encapsulation) パケットを使用しています。これらのパケットは IP パケットの特別な形態です。従って一般的にファイアウォール、プロキシサーバーおよび NAT はレガシーな VPN パケットを通過させることはできません。近年、いくつかの IPsec、L2TP および PPTP に対応した VPN 製品のベンダーはこれらの障壁となるデバイスを通過するための拡張方式を開発し、いくつかの VPN 製品にはこれらの拡張が実装されている場合もあります。しかしこれらのレガシー VPN プロトコルに対する拡張には依然として互換性の問題が残っています。多くの場合、VPN ユーザーは L2TP または PPTP を用いて VPN を構築しようと試みますが、ファイアウォール、プロキシサーバーまたは NAT があるネットワーク上では VPN の確立に失敗することになるでしょう。多くの方が、ホテルの客室から会社のネットワークに L2TP または PPTP を用いてリモートアクセス VPN を確立しようとして失敗する経験をお持ちではないかと思います。これらの接続確立の失敗には、L2TP または PPTP が、ネットワーク上にあるファイアウォール、プロキシサーバーおよび NAT との間で互換性がないことが原因として挙げられます。
まとめると、現代のネットワーク管理者にとっては VPN システムとセキュリティデバイスとの間にある互換性の問題が頭痛の種であると言うことができるでしょう。
SoftEther VPN による解決策: VPN トンネルを確立するために HTTPS プロトコルを使用
SoftEther VPN は VPN トンネルを確立するために HTTPS プロトコルを使用します。HTTPS (HTTP over SSL) プロトコルは TCP/IP ポート番号 443 を宛先として使用します。このポートは Well-known ポートであり、ほぼすべてのファイアウォール、プロキシサーバーおよび NAT は宛先ポートが HTTPS プロトコルによって構成されているパケットを通過させることができます。
レガシー VPN と異なり、SoftEther VPN は「Ethernet over HTTPS」カプセル化方式を採用しました。
HTTPS プロトコルはインターネット上で広く使用されています。Web ブラウザを用いて Web サイトとの間で安全な通信を確立する際に HTTPS が自動的に使用されています。HTTPS のお陰で、ユーザーはクレジットカード番号などの秘匿すべき情報をインターネット上で伝送することができます。現代の社会活動は HTTPS の上に成り立っています。HTTPS がなければ、インターネットを電子商取引のツールとして使用することは不可能です。
HTTPS がデファクト・スタンダードであるという事実のため、ほぼすべてのファイアウォール、プロキシサーバーおよび NAT は HTTPS の伝送ができるようになっています。LAN (Local Area Network) の内部にいる人であれば誰でもその人のコンピュータとインターネット上にある任意のホストとの間で HTTPS 接続を確立することができます。この条件を目ざとく利用することが、VPN プロトコルのための良好な透過性を実現するための最良の方法です。
そこで、SoftEther VPN は HTTPS を安定して利用でき、VPN トンネルを確立することができるプロトコルとして採用しました。SoftEther VPN は企業内 LAN、ホテルの客室および空港の無料無線 LAN アクセスポイントなど、ほぼすべてのネットワーク環境で利用することができます。これは IPsec、PPTP および L2TP などの他のレガシーな VPN プロトコルには成し得ないことです。
SoftEther VPN のこの特徴により、あなたは既存のあなたのネットワークのセキュリティデバイスにほとんど変更を加えることなく、最小限の努力だけで、あなたの要求に合ったあなた自身の VPN トポロジを簡単に設計することができます。SoftEther VPN が有する良好な接続性能により、あなたが SoftEther VPN をあなたのネットワーク上で使用したいと考える場合は、ネットワーク上のポリシーや設定をほとんどまたは全く変更することなく VPN を構築することができます。
一方で、あなたがもしレガシーな VPN プロトコルをネットワーク上で利用したい場合は、あなたは現在使用されているファイアウォールなどのセキュリティデバイス上のネットワークポリシーを変更し、ESP や GRE などの特別な IP プロトコルを通過させるように設定しなければなりません。あなたはファイアウォールの設定ファイルを書き換えなければなりません。こういった作業を行うため、あなたは追加の努力を必要し、さらにはあなたの従来安定していた貴重なネットワーク上で厄介な副作用を引き起こす原因となってしまうかも知れません。レガシーな VPN プロトコルの利用は、ファイアウォールの設定変更のための努力を費やすだけではなく、ファイアウォール上にレガシー VPN パケットを通過させるための穴を開ける作業によりネットワーク全体を危険下に陥れてしまうリスクがある訳です。
空港の無線 LAN やホテルの客室のインターネット接続回線などはセキュリティ上の利用により、HTTP と HTTPS 以外のすべてのプロトコルの通信を遮断している場合があり、レガシーな他の VPN プロトコルは利用できません。このようなとても制限の厳しいネットワーク上において VPN を利用する際は、SoftEther VPN のように VPN パケットを HTTPS 上にトンネリングする種類の VPN の利用が唯一の解決策となります。
結論: SoftEther VPN は単なる VPN ではなく、ファイアウォール、プロキシおよび NAT との互換性という面において非常に優れた VPN なのです。
1.2. 複数の標準的な VPN プロトコルをサポート
SoftEther VPN Server は 1.1 で説明されている HTTPS ベースの VPN プロトコルをサポートしているだけではありません。SoftEther VPN Server は L2TP/IPsec、OpenVPN、MS-SSTP、L2TPv3 および EtherIP プロトコルなどのレガシーな標準的 VPN プロトコルまでもサポートしているのです。これらの VPN プロトコルはインターネット上でこれまで広く使用されてきました。
あなたの iPhone、iPad、Android、Windows Mobile およびその他の多種多様なデバイスは、あなたの SoftEther VPN Server に、いつでも、どこからでも接続することができます。あなたはまた Cisco Systems 社やその他の VPN ルータベンダの機器のうち L2TPv3/IPsec または EtherIP/IPsec をサポートしている最新の機種を活用して、あなたの SoftEther VPN Server に VPN 接続させることができます。
SoftEther VPN Server は上図にある伝統的な VPN プロトコルをサポートしています。
L2TP/IPsec プロトコルのサポート
以下のデバイスには組み込みの L2TP/IPsec VPN クライアントが搭載されています。これらのデバイスは SoftEther VPN Server に VPN 接続を行うことができます。クライアントソフトウェア等のインストールは不要です。
あなたの Mac、iPhone、iPad または Android から SoftEther VPN Server に接続できます。
- iPhone
- iPad
- Android
- Windows Mobile
- Windows XP / Vista / 7 / 8 / RT
- Mac OS X
iPhone および Android は SoftEther VPN Server に接続できます。
GUI を用いて L2TP/IPsec をとても簡単に設定できます。
OpenVPN プロトコルのサポート
SoftEther VPN Server は「OpenVPN クローン機能」である OpenVPN 互換機能を有しています。もしあなたが以前から OpenVPN をリモートアクセス VPN または拠点間接続 VPN のために利用しているのであれば、あなたは OpenVPN Server プログラムを SoftEther VPN Server プログラムに置き換えることができます。そうすれば、あなたは SoftEther VPN が有する強力な各種の機能および高いパフォーマンスの恩恵を受けることができます。
SoftEther VPN Server に搭載されている OpenVPN 互換機能は、OpenVPN Technologies, Inc. 社の実装した OpenVPN プログラムと同等に動作します。そして、単に十分に動作するだけではなく、SoftEther VPN Server のほうが OpenVPN 社の実装よりもパフォーマンスおよび機能性で優良となっています。あなたの OpenVPN クライアントデバイスまたは拠点間接続 VPN における拠点側デバイスは、あなたが設置する新しい SoftEther VPN Server にとても簡単に接続することができます。SoftEther VPN は、OpenVPN プロトコルを利用してリモートアクセス L3 VPN および拠点間接続 L2 VPN のどちらでも簡単に構築することができます。
OpenVPN Server の代わりに SoftEther VPN Server を使用することの利点は以下のとおりです:
- SoftEther VPN Server は OpenVPN Technologies, Inc. 社の OpenVPN Server と比較して容易に設定を行うことができます。
- OpenVPN 設定ファイル自動生成機能を用いて、VPN クライアントのための接続設定ファイル (.ovpn ファイル) を簡単に生成できます。
- SoftEther VPN Server は OpenVPN プロトコルをサポートするだけではなく、すべての標準的な VPN 機能を備えています。これらは SSL-VPN、L2TP/IPsec、MS-SSTP、L2TPv3/IPsec および EtherIP/IPsec が含まれます。したがって、OpenVPN およびその他の VPN プロトコルの VPN サーバーを、SoftEther VPN Server によって構築されるわずか 1 台の VPN サーバーに統合することができます。
- ユーザー管理およびセキュリティ機能が GUI ツールによって設定できます。すべての管理機能は統合されており、VPN サーバーに対する管理オペレーションは 1 個の共通パスによって実現されています。
- OpenVPN が動作するすべてのオペレーティングシステム (例: Linux、Mac OS X、UNIX、iPhone および Android) から SoftEther VPN Server に接続することができます。
OpenVPN サーバー機能は GUI から簡単に有効化できます。
PC 版の OpenVPN だけではなく、iPhone / Android 版の OpenVPN Client も利用できます。
Microsoft SSTP VPN プロトコルのサポート
SoftEther VPN Server は Microsoft SSTP VPN サーバーのクローン機能を有します。Windows 7 / 8 / RT には SSTP VPN クライアントが組み込まれており、これらの OS から SoftEther VPN Server に VPN 接続を行うことができます。SSTP (Secure Socket Tunneling Protocol) は Microsoft 社によって提案された PPP over HTTPS プロトコルの一種です。
本来、SSTP VPN サーバー機能は Microsoft Windows Server 2008 / 2012 にのみ実装されています。しかしながら、これらの Microsoft 社のサーバーオペレーティングシステムのライセンス料金はとても高額です。さらに、一般的な技術レベルのユーザーにとって Windows Server の VPN 機能の設定は非常に難解です。SoftEther VPN Server を使用すれば、Microsoft SSTP VPN Server の互換機能を利用することにより、Microsoft 製のものと比較してほぼ同一の機能およびパフォーマンスを実現できます。
Microsoft SSTP VPN Server の代わりに SoftEther VPN Server を使用することの利点は以下のとおりです:
- Microsoft 製の SSTP VPN Server と比較してとても簡単に設定できます。
- Windows クライアント上に VPN クライアントをインストールする必要がありません。Windows 上の組み込みの SSTP VPN クライアントは SoftEther VPN Server への接続をサポートしています。
- Windows RT (ARM 版の Windows) も同様に組み込みの SSTP VPN クライアントを搭載しています。
- ユーザー管理およびセキュリティ機能が GUI ツールによって設定できます。すべての管理機能は統合されており、VPN サーバーに対する管理オペレーションは 1 個の共通パスによって実現されています。
- 高価な Windows Server 2008 / 2012 を購入する必要がなくなります。これによりコストを削減することができます。
- SoftEther VPN Server に搭載されている SSTP VPN サーバー互換機能は、Windows 以外の OS でも動作します。Linux、Mac OS X、FreeBSD および Solaris で完璧に稼働します。
L2TPv3/IPsec および EtherIP/IPsec プロトコルのサポート
Cisco Systems 社製のルータおよび他ベンダーの製品のうち多くが、L2TPv3/IPsec または EtherIP/IPsec VPN プロトコルをサポートしています。これらのプロトコルは拠点間 L2 ブリッジ VPN を構築するために使用されています。SoftEther VPN Server は IPsec 上の L2TPv3 および EtherIP をサポートしています。Cisco ルータを各拠点のエッジ VPN 装置として設置し、SoftEther VPN Server をセンター拠点の VPN サーバーとして使用することにより、多数の拠点間を L2 ブリッジで VPN 接続することができます。これはコスト削減効果があります。Cisco 製の VPN センター用ルータはとても高価です。VPN のセンター拠点に設置される必要がある Cisco ハイエンドルータを単に SoftEther VPN Server に置換するだけで良いのです。
1.3. Microsoft 社や OpenVPN 社の実装より高速なスループットを実現
SoftEther VPN プロジェクトでは、2012 年末に筑波大学大学院システム情報工学研究科コンピュータサイエンス専攻の研究室における 通信速度の試験 を実施しました。
私たちは実験では 5 種類の VPN プロトコルをテストしました: SoftEther VPN、L2TP/IPsec、SSTP、OpenVPN (レイヤ 3 モード) および OpenVPN (レイヤ 2 モード) です。私たちは SoftEther VPN のパフォーマンスを評価するため、SoftEther VPN Server による実装と、Microsoft Corporation 製および OpenVPN Technologies, Inc. 製の実装との両方を比較しました。テスト環境は次のとおり: Intel Xeon E3-1230 3.2GHz および Intel 10 Gigabit CX4 Dual Port Server Adapter で動作する Windows Server 2008 R2 x64。
- SoftEther VPN プロトコルにおいては SoftEther VPN Server を用いた際に 980Mbps のスループットを測定しました。
- L2TP/IPsec プロトコルにおいては SoftEther VPN Server を用いた際に 614Mbps の速度が測定され、これは Microsoft 社製 Windows Server 2008 R2 上の Routing and Remote Access サービス (RRAS) を用いた結果である 593Mbps よりも高速な結果となりました。
- SSTP においては SoftEther VPN Server を用いた際に 737Mbps の速度が測定され、これは Microsoft 社製 Windows Server 2008 R2 を用いた結果である 715Mbps よりも高速な結果となりました。
- OpenVPN (L3) においては SoftEther VPN Server を用いた際に 89Mbps の速度が測定され、これは OpenVPN 社製の純正な実装を用いた結果である 76Mbps よりも高速な結果となりました。
- OpenVPN (L2) においては SoftEther VPN Server を用いた際に 90Mbps の速度が測定され、これは OpenVPN 社製の純正な実装を用いた結果である 83Mbps よりも高速な結果となりました。
結論として、SoftEther VPN Server は Microsoft 社製の Windows の実装と比較すると、L2TP/IPsec において 103.5%、SSTP において 103.0% 高速でした。そして OpenVPN 社製の純正な実装と比較すると、OpenVPN プロトコルにおいて 108-117% 高速でした。それだけではなく、SoftEther VPN プロトコル (Ethernet over HTTPS、1.1 で説明) では 980Mbps のスループットを測定し、これは L2TP/IPsec プロトコルと比較して 159.6% 高速であり、SSTP プロトコルと比較して 175.2% 高速であり、さらに OpenVPN プロトコルと比較して 9.8 倍も高速であるという結果になりました。
実験結果は SoftEther VPN Server が世界で最も高速な VPN サーバープログラムであることを示しました。
1.4. 組み込みのダイナミック DNS 機能 (*.softether.net)
これまで存在したほぼすべての VPN ソリューションは、安定して動作するために固定のグローバル IP アドレスが必要でした。固定グローバル IP アドレスを維持するには、ISP に対して高額な月額料金を支払い続ける必要があります。現代の世界においては、グローバル IP アドレスの不足は深刻な問題となっています。
SoftEthr VPN はこれらの問題を緩和するために組み込みのダイナミック DNS (DDNS) 機能を搭載しています。ダイナミック DNS 機能はデフォルトで有効になっています。DDNS 機能により、あなたの VPN サーバーの IP アドレスは ".softether.net" というドメインのサブドメインのレコードに関連付けられます。この DDNS 用のドメインはソフトイーサ株式会社および筑波大学によって運営されており、無償で利用できます。
DDNS のホスト名 "abc.softether.net" ( "abc" の部分はユーザーが自由に設定することができる識別子) はあなたの SoftEther VPN Server に専用に割当てられます。この DDNS ホスト名をあなたの VPN サーバーに接続したいユーザーに教えると、ユーザーはその DDNS ホスト名を VPN 接続先として入力するだけで、あなたの VPN サーバーに接続できるようになります。対応する IP アドレスが突然変化した場合は、DDNS ホスト名に対して登録されている IP アドレスは自動的に新しい IP アドレスに追従します。この仕組みにより、固定されたグローバル IP アドレスはもはや不要となり、ISP に対して支払う月額料金を節約することが可能になります。
ダイナミック DNS は SoftEther VPN によってネイティブサポートされています。
ダイナミック DNS 機能はこの画面から簡単にセットアップできます。
1.5. NAT トラバーサル機能
これまでの VPN システムにおいては、VPN サーバーを社内に設置する場合は会社のファイアウォールの管理者に依頼してファイアウォールや NAT 上におけるエンドポイント (TCP または UDP ポート) をインターネットに対して開放してもらう必要がありました。
このようなファイアウォール上におけるポートの開放を行わなくても社内に VPN サーバーを簡単に設置することができるようにするために、SoftEther VPN Server には「NAT トラバーサル機能」が搭載されています。
NAT トラバーサル機能はデフォルトで有効になっています。NAT トラバーサル機能が有効な間は、SoftEther VPN Client コンピュータは NAT やファイアウォールの内側にある VPN Server に接続することができます。NAT やファイアウォール上で特別な設定を行う必要はありません。
NAT トラバーサル機能は、VPN サーバーの設定ファイルにおいて "DisableNatTraversal" の値を "true" に設定することによって無効化することもできます。また、クライアント側では宛先 VPN サーバーのホスト名の末尾に "/tcp" という接尾子を追加することで無効することができます。
NAT トラバーサル機能はあなたの会社のファイアウォールを貫通します。
1.6. VPN over ICMP および VPN over DNS 機能 (びっくり !)
ごく稀に存在する、とても制約が厳しいネットワークにおいては ICMP または DNS パケットのみが通過可能です。具体的な理由は分かりませんが、そのようなネットワークでは TCP や UDP の通信が遮断されており、ICMP および DNS だけが伝送可能な制限が厳しいネットワークがあります。
これらのとても制約が厳しいネットワーク上で SoftEther VPN クライアント - サーバー間のセッションを確立することを可能とするため、SoftEther VPN には「VPN over ICMP」および「VPN over DNS」機能が搭載されています。
この機能は制約の厳しいファイアウォールを貫通するためにとても強力に動作します。すべての VPN パケットは ICMP または DNS パケットにカプセル化され、ファイアウォールを超えて伝送することが可能になります。受信側のエンドポイントでは、カプセル化されたパケットを取り出して扱います。
この機能は公衆無線 LAN を活用するためにとても便利です。いくつかの公衆無線 LAN では ICMP または DNS パケットのみを通過させます。これらの無線 LAN では TCP または UDP パケットが遮断されているのです。そこで、もしあなたが VPN Server をあなたの自宅や会社に予めインストールしておいてから外出すれば、そのような制約の厳しいネットワーク上であっても、自由なプロトコルを用いてインターネットを利用することができるようになります。
VPN over ICMP および VPN over DNS は、ICMP および DNS プロトコルの仕様に準拠して実装されています。しかしながら、通常の ICMP または DNS と比較すると少し特異な動作をすることがあります。これはネットワーク上における「バグのあるルータ」におけるメモリオーバーフローやその他の問題を引き起こすことがあります。ルータによってはこれらの問題により再起動してしまうこともあります。そうすると、あなたの周囲にいる同一の無線 LAN を使用している他のユーザーにも影響を与えてしまうかも知れません。そのような場合は、VPN 接続先ホスト名の末尾に "/tcp" サフィックスを追加することにより、VPN over ICMP および VPN over DNS を無効にしてください。
あなたの通信したいパケットの内容は分割され、ICMP パケットにカプセル化されます。こいつはすごい!
とても簡単な操作で VPN over ICMP および VPN over DNS を有効化できます。
1.7. VPN Azure クラウドサービス (学術実験)
あなたが SoftEther VPN Server をファイアウォールや NAT の内側に設置した場合で、かつ NAT トラバーサル機能、ダイナミック DNS 機能および VPN over ICMP/DNS 機能のいずれもが正しく動作しない場合でも、諦めることはありません。最終手段として、あなたは「VPN Azure クラウドサービス」を使用することができます。
従来のすべての VPN システムでは、社内 LAN に VPN サーバーを設置するためにはファイアウォールの管理者にいくつかの TCP または UDP ポートを開放してもらうよう依頼する必要がありました。そして、最低でも 1 個の固定グローバル IP アドレスが必要でした。これはとても不便なことです。
この既存の問題を解決するため、我々は「VPN Azure クラウドサービス」を提唱しました。このサービスはソフトイーサ株式会社および筑波大学による学術実験として提供されています。あなたは事前に VPN Server 上の VPN Azure 機能を有効にしておくだけで、遠隔地にある VPN クライアントコンピュータから、会社のネットワーク内に設置した VPN Server に VPN 接続することができるようになります。この際、会社のファイアウォールにおいて TCP/UDP ポートを開放しておく必要は一切ありません。VPN Server は TCP コネクションを「ファイアウォールの内側から外側に向かって」接続確立します。コネクションは VPN Azure クラウドサービス上のリレーサーバーに対して維持されます。この状態で VPN Client からの接続確立要求が VPN Azure クラウドサービス上の中継点に到達すると、クラウドサービスはすべての VPN トラフィックをファイアウォールの背後にある VPN Server に中継します。一度接続が確立された後は、あなたはファイアウォールによって保護された企業または家庭内ネットワークの内側にある VPN サーバーにアクセスできます。
VPN Server が VPN Azure クラウドに接続した際に、VPN Server はユニークなホスト名 "abc.vpnazure.net" ( "abc" はユニークな識別子) を維持します。このホスト名は実際には適切な VPN Azure クラウドサービス上の VPN 中継サーバーに関連付けられています。
VPN Azure クラウドサービス機能はデフォルトで無効になっています。VPN Server 管理マネージャの GUI 上からいつでも簡単に有効化することができます。詳しくは http://www.vpnazure.net/ を参照してください。
VPN Azure クラウドサービスはファイアウォールを貫通するための無償で強力な VPN トラフィックの中継機能です。
1.8. 多くの OS および CPU で動作
SoftEther VPN は以下のように多数のオペレーティングシステムで動作します。他の VPN 製品はいくつかの特定のシステム上でしか動作しません。たとえば、Cisco IOS ソフトウェアは Cisco Systems 社が独占的に製造・販売している Cisco ルータハードウェア上でのみ動作します。SoftEther VPN はそのような独占的状況と異なり、多くの OS で動作するだけではなく、以下に掲げられるような多様な種類の CPU アーキテクチャで動作します。
この利点は、たとえばあなたが SoftEther VPN Server を特定のプラットフォーム上で動作させており、その後にプラットフォームを変更したくなったら、いつでもプラットフォームを乗り換えることができることを意味します。SoftEther VPN ソフトウェアのコードは C 言語で記述されており、複数のシステム上における互換性と移植性に関して極めて慎重な努力が重ねられて開発されているため、複数のプラットフォーム上で同様に動作し、さらに設定コマンドおよび設定ファイルもプラットフォーム間でほぼ完全に同一です。
- Windows
Windows 98, 98 SE, ME, NT 4.0, 2000, XP, Server 2003, Vista, Server 2008, 7, Server 2008 R2, 8 および Server 2012 がサポートされています。Intel x86 (32 ビット) および x64 (64 ビット, いわゆる AMD64) プラットフォーム上で SoftEther VPN Server、Client および Bridge が動作します。
- Linux
Linux Kernel 2.4, 2.6 および 3.x がサポートされています。Intel x86 (32 ビット), x64 (64 ビット), ARM, MIPS および PowerPC プラットフォーム上で SoftEther VPN Server、Client および Bridge が動作します。
- FreeBSD
FreeBSD 5.x, 6.x, 7.x, 8.x および 9.x がサポートされています。Intel x86 (32 ビット) および x64 (64 ビット, いわゆる AMD64) プラットフォーム上で SoftEther VPN Server および Bridge が動作します。
- Solaris
Solaris 8, 9, 10 およぴ 11 がサポートされています。Intel x86 (32 ビット), Intel x64 (64 ビット), SPARC (32 ビットおよび 64 ビットの両方) プラットフォーム上で SoftEther VPN Server および Bridge が動作します。
- Mac OS X
Mac OS X 10.4, 10.5, 10.6, 10.7 および 10.8 がサポートされています。Intel x86 (32 ビット), Intel x64 (64 ビット), PowerPC (32 ビット) および PowerPC G5 (64 ビット) プラットフォーム上で SoftEther VPN Server および Bridge が動作します。
プラットフォーム非依存の VPN サーバーを構築するため、
SoftEther VPN プログラムの内部では OS 非依存モジュールが活躍しています。